不器用な僕等の唄を
「では、私がボーカルになる前にフラオブがやっていた伝説とも言える曲を先輩に唄ってもらいたいと思います!」
…は?
予定外の轟の言葉に、あたしは固まる。
高校の春のライブハウスはこれで最後。
伝説の曲って…
昔始める時に書いた色んな事を書きなぐって曲にした…アレ?
ステージの袖にいる紘波に視線を送ると、ニコリとした笑顔が見える。
あいつ…知ってたな。
二度もあたしを嵌めたって事で今度コーヒーに砂糖混ぜてやろう。
阿久津サンのことを紘波は知っていた。
知っていて、あたしを見ていたらしい。
「“ブルースプリング”です!」
噴き出しそうになった。
何故轟がその曲を知っている?
あたしは再度固まった。