不器用な僕等の唄を

しかも、今。

「音宮先輩。」

マイクなしのボリュームで声が聞こえる。

「よろしくお願いします。」

…先輩に唄って、って言いやがった…。

「無理。聞いてない。そして歌えない!」

「お願いします。」

深くお辞儀をされた。
困る。これじゃ断れない。

「音宮。」

耳に響く音は、雪比良の声。

…それは絶対らしい。

轟や高橋が入る前、あたしがボーカルをしていた。

でもキーボードを弾きながらボーカルだなんて、馬鹿には相当キツくて諦めた。

「キーボード、私練習したんですよ。」

…だったら歌を練習してくれ!


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