不器用な僕等の唄を

時間をかけるのは、ライブに来てくれたお客様に一番してはならないこと。

あたしは渋々、マイクを受け取る。

「…先輩、一言お願いします。」

ドラムの横を通り過ぎる時、高橋に言われ、

「トーコちゃん素敵!」

ベースの矢祇に冷やかされ、

「やりたいようにやってくれ。」

あたしの眼を射抜くギターの雪比良。

…全員に嵌められた。

悔しさを胸に、もう壊れてやると誓った。

真ん中に立つとこちらを向くみんなの顔が見える。

「頑張ってお姉ちゃん!」

その声が聞こえてそっちを見れば、桔梗と香坂と野田がいる。



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