不器用な僕等の唄を

玄関が開く音がして見るとお姉ちゃんが靴を履いたまま額に手を当てていた。


『嫉妬してる』


何故か、その姿を見てでてきた言葉。

「大丈夫?」そう声をかけたいのに。
心配したいのに。

寝ぼけていたから?

体が動かなかった。

お姉ちゃんは額から手を退かすと、靴を脱いで階段を上って来る。

必然的に鉢合わせになった。

「…ただいま。」

眠いのか面倒なのか、呟くようにそう言ったお姉ちゃんは、横を通り抜けていく。

「お姉ちゃんって。」

コントロールが利かない。

口がお姉ちゃんを呼び止める。



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