【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
私はナツの白い『海人』と書かれたTシャツの背中をギュッと握った。


今から言うお願いが、ナツに受け入れてもらえるように。


「私の、私の身体ごと、ナツでいっぱいにしてほしい。奪って、暴いてほしいの」


こんな時、アヤだったらきっと遠回しな言い方じゃなくて『私とヤって』なんてはっきり言うのかもしれないな。


私は、頭の片隅でそんなことを考えた。言ってしまった後って、意外と能内は冷静らしい。


私の言葉に、ナツの返事はない。


きっとナツにとって、所詮私は身体を繋ぐほどの関係じゃないから困らせてしまったのかも。


そう思うとなけなしの勇気は途端に情けなく、恥ずかしいものになって行く。
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