【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「汚し、たく……ない、な」


静寂の空間に、ナツの掠れた色っぽい声が響く。


「汚したくない。冬花のこと。俺が冬花を奪ったら、暴いたら、汚す気がする。綺麗な、冬花を」


ナツの声が、夜に鳴く鈴虫みたいに震えている。


きっと、ナツは本音を言ってくれているんだ。ホントに、私なんかのことを考えて言ってくれてる。


「ナツ……ナツは綺麗だよ。今まで出会った人の中で、一番純粋で、キラキラしてる。夏が終わってもナツのキラキラを忘れたくない。だから、少しだけ、私にキラキラを分けてくれない、かな?」


まるで、私が男で女の子を口説いてるみたいな台詞。


そう思うと、重かった心が軽くなって、妙に笑えてきた。
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