【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−

それはナツも同じみたい。


「あはは、冬花、超キザ男な発言するんだね」


「うるっさい。……でも、なんてんだろ。ナツには私を抱くことを、重く感じないでほしい。試着みたいな感覚で、いいから。それでいいから」


一歩先に踏み込むことで、ナツとの関係を崩したいわけじゃない。


ナツにとっては火遊び程度の出来事でも構わない。


きっとナツとの出来事のひとつひとつが、私の最高の宝物になるから。


「……分かった。そこまで言われて断れるほど、俺って出来た人間じゃないし」


ナツはそう言うと、私の手を取って引き寄せ、滑らかな動作で頬を撫で、顎を人差し指と親指で持ち上げる。


そして、私に甘いような、しょっぱいような、一瞬だけ重なるキスをした。