【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
花火の殻を片付けて、初めて踏み込んだナツの部屋。


初めてここに来た日にステージで弾いてたナツの胡弓が飾ってある。


インテリアはどこか優しいアンティークのモノで、そこには写真が飾ってある。


「はいはい、人の部屋をじろじろ見回さないの。変なものが出たら恥ずかしいでしょ?」


その写真を見ようと思ったら、ナツの大きな掌に私の視界は覆われる。


「こんなことなら、ちゃんと部屋の片付け、しとけばよかったな。ごめんな」


真っ暗な視界、顔と腰をがっちり捕まれ、耳元にナツの声と吐息を感じて、心臓が跳ねた。


絶対に確信犯だ。私がナツの声を好きだって分かっててやってる。


……ううん、ホントは、声だけじゃない。仕草も、匂いも、ゴツゴツの手も、全部大好き。
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