【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
そのバイクの人は、さっきまで私の立っていた場所に大きなバイクを停車させると、キョロキョロと辺りを見回す動作を始める。


青いフルフェースに黄色いアロハシャツ、適度に筋肉質な日焼けした腕。


もしかして、電話口の人ってこの人かな。優しい声だったのにガテン系でいかつい。


そう思いながらも、私はバス停から顔だけひょっこり出す。


すると向こうも私の姿に気付いたみたいで、フルフェースを被ったまま2、3秒私を見ていた。


確認するかのように手をふわふわっと振ると、その小麦色の腕も同じ動きをする。


そして、ようやく被っていたフルフェースに小麦色に焼けたゴツゴツの手を掛けた。
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