【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
情事後特有のけだるさを抱えたまま、いつもの朝を迎える。
「ほーら、もう!ねぼすけ起きなさい。あーさーだーぞー」
「んー、ん……」
目を開くと、そこには相変わらず似合わない、ハイビスカス柄のエプロン姿のナツ。
「ご飯出来てるから、早く着替えておいで」
ナツは日だまりみたいな笑顔を向けると、私の寝癖だらけの髪の毛を撫でて、先に部屋を後にした。
ベッドと、自分から香るナツの香り。その香りが、昨日のことを全部思い起こさせて私の胸を締め付ける。
でも、そんなの私の自業自得だから、『抱きしめて』とか『愛してる』なんて言葉でナツのことを縛ったりしないよ。
どんなに、どんなに望んだって許されないことくらい、子供の私にも分かるもの。