【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
でも……私、見なきゃ良かったって思うんだ。


ナツが中心で笑っている写真達の中に、ひとつだけ、その空間に似合わない写真があった。


見慣れた小汚い軽トラをバックに映った三人の人間。


右端はもっさりした長い髪の毛に、がりがりの体、ダサい眼鏡に下手くそな薄ら笑いの男。


左端は見慣れたヨレヨレのTシャツを着た明るく陽気なのが見て取れるおじさん。


真ん中は、懐かしい群青色のブレザーを着た、黒髪の女の子。


いや、こんな遠回しな、客観的な言い回し、おかしいのかもしれない。


でも、これが少しでも初めてみる写真で、人で、私には関係のないものだと思いたかったから、客観視するしか方法は無かったったんだ。
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