【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「はっ……冬花!」


ただ突っ立って星空を見上げる私の後ろから、不意にナツの声が聞こえた。


少し息を乱したナツは、少し悲しげに微笑むと、迷わず私の元へ歩いて近寄った。


ナツは、私の頭を大きな掌でぽんぽんと叩くと、私の横に並ぶ。


「部屋に、冬花のタオルが落ちてたよ」


「……ん。ありがとう」


きっとナツのことだから、私がタオルを忘れていただけで、全てを悟ってしまったんだろうな。どうしても、狡い人。


「で?俺に聞きたいことがあるんじゃないの?」


ほら。やっぱり、ナツは私の何歩も前を歩いて行ってる。


でも、そういう言い方をするってことはつまり、見たものが全てだと言うことだよね。
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