【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
私は、今のこの状況を『なんでもないよ』なんて言えるほど、よく出来た奴じゃないから、だから、聞くよ。ナツ。


「ナツはさ……アオ先生、なの?」


その問いに、ナツは困るでも、悲しむでもなく、優しく微笑んだ。


そして、そのぷっくりした唇が私の耳元に近寄る。


耳に、全神経が集中する。ナツの香りに包まれて、全てが抱きしめられてるみたいで、麻痺してしまいそう。


「それは……まだ、言わない。全てを語るのは早いから。俺の全てを冬花に話すのは……だから、言わない」


その耳元に舞い降りた言葉は、何とも言い難い、哀愁を帯びたような感じを受けた。


どうして?ここまで来て、私が分かってしまっている上で、まだ話してはくれないの?
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