【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「冬花ぁ!5番テーブルに生2つ!」


「はあーい!」


八月もいよいよ後半。お店には夏休み最後の追い込みといわんばりにお客さんが入っている。


沖縄の夏はまだまだ終わらないけれど、やっぱり、皆にとっての夏は八月いっぱい。


そして同時に、私とナツの夏も、タイムリミットは十日間ということになる。


この十日間に『もう』を付け加えるか『まだ』を付け加えるか。


正直、私は前者だ。まだまだ、沢山一緒にいたいのに。もっと、ナツのことを知りたいのに。


一日の時間がゆったり過ぎる沖縄でさえ、私達の時間をゆったりには出来ないんだ。


進む時間はどんな人間にも平等で、それがこんなにも残酷だというのを、私はここに来たことで初めて学んだ。
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