【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−



「たくぅ!なんなんさ、このお客さんの量!皆遊んでねえで働けよ!こちとら働きっぱなんスけど!」


「アホ!客が多いってことは売上も良いってことだろ?喜べよ!」


今日もバタバタと時間が過ぎ、夕方。アヤとカズはそんな言い合いをしながら帰り支度を済ませている。


相変わらずなこの二人。お互いは気付いてないだけで両想いなのに、進展も後退もしない、絶妙な距離感のまま。


「いいなあ……二人には、まだまだ沢山時間がある」


そう思わずにはいられない。だって、夏が終わっても二人の関係はこのままで、バイトの量が減ったとしても、いつでも会えるもの。


思わず呟いてしまった私に、二人の視線が向いた。
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