【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「もう!フユちゃんってば何考え事してんスか?せっかく息抜きに連れて来てあげたのにー」


水槽の中をボーッと見つめていた私に、見かねたカズが接近する。


「連れて来てくれたのはアヤじゃん。カズは喋ってるだけなのに」


「提案したのは俺っスもんね!ねーアヤさん!」


無邪気に笑うカズに、愛おしそうに目を細めるアヤ。


二人はキラキラしている。なのに私は、上手く、笑えない。楽しくないわけじゃないのに。せっかく二人が私を気にかけてくれたのに。


頭を支配するのはナツのことばかり。時間が足りなくて、でも好きで好きで、何か伝えたい。


こんなぐちゃぐちゃな私なんて、この水槽の水の中に溶け込んでしまえればいいのに。
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