【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−



カズがお腹が空いたとせがんだから、館内のレストランの一角に陣取り、ご飯を注文する。


「んー、のどかだねえ。バイトのない日は。戦場だ、あそこは」


「そっスねえ。こーんなにゆったり流れる一日なんてないっスもんね」


カラコンで水族館の水槽と同じ色のカズの瞳がアヤを見つめてキラリと輝く。


「……時間はさ、ゆったり流れているようで平等なんだよ。私には泣いても笑っても、九日しかないんだ」


なんでだろう。ナツの前ではさらけ出せない本音が、二人の前だとホロリホロリと零れる。


それは、この二人だからなのかもしれない。まだ出会ってそんなに経ってないし、友達ってわけでもないのに、不思議だなぁ。
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