【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「馬鹿だなあ、フユは」


そんな私にアヤは、短い眉毛をハの字にしてそう呟いた。


アヤが、こんなに優しい困った顔をするだなんて、少しだけ驚いてしまう。それくらい、優しい顔。


「確かにあんたの言うことは正しい。でも、ナツさん言ってた。人が輝ける時間は永遠だって。フユとナツさんの青春だって、離れてようが一生モンだろ?」


「そっスよ。あと九日でフユちゃんが帰ろうが、二人のひと夏は一生の宝さあ!帰ったらここでの生活を忘れるわけじゃないんスから。それとも、フユちゃんは忘れちゃうの?ナツさんのことも、俺達のことも」


アヤの力強い言葉に、カズの包み込むような言葉。


二人の言う通りだ。ナツと出会えたことで、私は沢山宝物をもらった。


それは、もう会えなくなっても、一生物の宝に変わりはない。
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