【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
車で来たから帰り方なんか分からなかった。


仕方がないから、タクシーを捕まえて帰る。


いつもなら高くて使わないけど、今はただ早く帰りたかった。


店の前について急いで支払いをして外に出ると、店内からはライブ中なのか音が少し漏れている。


ドアを開くと、その音がぶわっと全体を包み込んで、爪先から頭のてっぺんまでびりびりと駆け巡る。


むわっと熱気を感じて、私は思わず強く目を閉じた。


その熱気と爆音に慣れた頃、私は人混みを掻き分けて、調理場へ抜ける道へ出る。


言いたいことが明確になっても、まとまる気がしない。


それでも、ナツのところへ行かなきゃ、行かなきゃ、行かなきゃ……!
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