【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
ここからだと、ステージが一望出来る。ナツはステージの後ろで、音の調整を行っているみたいだ。


ナツの姿が見えると、なんだかホッとして、涙が出そうになる。


その涙を深呼吸をしてどうにか引っ込めて、ナツをもう一度、見逃さないように瞳で捕らえる。


音の調整を終わらせたナツは向こう側にはける瞬間、ふとこちらに視線をやった。


暗くて、人もいっぱいいて普通気付かないのに、ナツは確かに私に気付いた。


一瞬いるはずのない私にビックリしたのか目が大きく開いたけど、ニッコリと私に笑顔を向けたんだ。


ナツが笑ってくれた。それだけで、眩しくて、温かくて、切なくなるのに優しい気持ちになっていく。


あの屈託のない笑顔が、私はきっと一番大好き。
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