【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「……久しぶりにちゃんと笑ったね。特にこの間俺の部屋に来てからは、ずーっと複雑な顔してたから」


さっきまでとは一転して、真剣だけど寂しそうな眼差しを私に向けるナツ。


「ナツ……ナツはまだ早いって言ったけど、私、知りたい。ナツと私の全てを。知った上で残りの時間を過ごしたいんだ」


私はそんなナツの眼差しに答えるように、ぐっと目の真ん中に力を加えた。


ナツは私をしばらく動くことなく見つめていたけれど、すっと立ち上がる。


「分かった。俺の全てを話す。まだ早いと思ったのは、勘違いだったのかもね。……ぶっちゃけ、全部思い出してほしいし」


待ち望んだ答えだったけど、いざその返事を聞き、私はごくん、と唾を飲み込んだ。
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