【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
ナツと私は沖縄初日に落ち合ったバス停に二人揃って腰を下ろした。
「そういえばさあ、驚いたな。ナツが迎えに来てくれた日、この風景に似合わなすぎる風貌で。ちょっと怖かったよ。今なら笑えるけど」
「そうかなー?いっつもあんな感じだし、そう言われると返答に困るな」
ナツはそう言いながら唇のピアスをいじる。
「それに、そんなに顔面にピアスついてる人なんて、子供に泣かれるよ。売り飛ばされるーってね」
「酷いなー。俺、子供大好きだから嫌われたら悲しいよ」
おどけた顔で言うナツだけど、ふっと真顔になる。
ついに、私が聞きたかったことが分かる時が来る。
ナツが静かに語り出した物語を、私は当時のことを思い出しながら聞いた。