【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−



私とその人との初めての出会いは五年前。当時私は高校一年生だった。


「冬花、突然なんだけど、しばらくうちに若い男が住むから」


「は……?」


普通の平日。何も変わらない日常の中、突拍子もないことを言い出すお父さん。昔からこんな性格なんだ。


「オーイ、アオ先生、もじもじしてないでおいで!」


私の頭がまだ話に追いつかない間に、お父さんが廊下から人を部屋へ招く。


「あ。……どうも。はじめ、まして」


『アオ先生』の初見は、ガリガリで小汚い、同じ家にいても絶対意識しないだろうと自信の持てる男だというものだった。


背は割と高そうだけど、その背中は自信が無さそうに丸まっている。


顔は長く伸びた髪の毛と分厚い眼鏡でほとんど分からない状態。これが、小汚さを象徴してるみたいだ。


体の細さは異常で、骨に皮膚が貼り付いているとしか思えないくらいに肉がない。


その体を、ヨレヨレのシャツとスーツのパンツがだぶだぶと隠している、そんな人。


< 153 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop