【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「……あの後、沖縄にすぐ向かったんだ。冬花の話を聞いて、沖縄に住みたくなってたから」
そう言って口角を上げるナツは、やっぱりアオ先生とは別人に見える。
でも、体に纏った温かな雰囲気は、確かに似ている。
信じても良い大人だと思ったアオ先生とナツは、確かに同じ人なんだ。
「実はもう冬花が修学旅行に行っている間に辞表出しててさ。春井さんにだけは新しくした携帯の番号教えてたんだ」
そっか。きっと、あの時写真を撮ったのは、お父さんはアオ先生……ナツがいなくなるのを知っていたからだったんだ。
ナツは一息つくと、話を再開させる。
多分、全てを話すのは、ナツにとって凄く労力のいることなんだと思う。
自分を全て暴くのは簡単に出来ることじゃないと思うし、ナツは変わる前の話だから、更に疲れるだろう。