【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「あの時の俺は、冬花に何気なく言われた通りに時間に追われていた。何かに焦っていた。けど、春井さんが、冬花が救ってくれたんだよ」


「そんな……!私、何もしてあげれてっ……!」


私の言葉は最後まで言わせてもらえず、私の唇はナツの人差し指で遮られる。


「冬花は学生時代の俺に似てたから。でも、俺にはない美しさを当時から持ってて、冬花は、あの時から俺の特別なんだよ。だから、冬花の存在が、俺に勇気をくれた。これは断言出来る」


ナツの言葉に、顔全体がカッと熱を帯びて、特に、目頭が熱い。


やば……泣きそう、かも。


ずっと我慢してたから、今回の波を抑えるのは大変だよ。


次にナツの声を一音でも聞いたら、私の我慢なんて簡単に崩れてしまう。
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