【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「だから、ここに冬花が来る前の話なんだけどね、春井さんから冬花が時間はあるのに焦っているって聞いて、何かしてあげたくなった。それで、沖縄に呼んだんだよ」


これが私がここに連れて来られた真実。私がここにいるのは、お父さんとナツの優しさだったんだ。


「でも、何かしてあげるどころか、俺は冬花にもらってばっかり。あの頃から俺は変わっちゃいない。馬鹿みたいに一方的に冬花を好きで、ひと夏限定だとか託つけて手を出した。……冬花がいる間だけでいいから、自分のものにしたかった」


ナツの話のひとつひとつを聞くうちに、ついに我慢出来なくなって、私の目から涙が落ちた。


自分ばっかり好きだと思っていたけど違った。私は、ナツには勝てない。


ナツは、こんな私のことをずっと好きでいてくれた。そして、その想いでずっと余裕なんて無かったんだね。
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