【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
ナツは私の目を、そのキラキラした目でじっと見つめた。


「俺、変わったでしょ?五年で、いっぱい努力した。笑うのも、喋るのも好きになろって。だから、自然に変われたんだよ」


私の涙を拭う掌は、あの時と変わらない温かさで、全然違う力強さを持っている。


「約束通り少し強くなれたからから。だから……」


ナツは私の耳元に唇を寄せて、静かに囁いた。


「To hold you in my arms again」



心地良く、熱を帯びた、掠れた低すぎない、聞いた誰もを優しい気持ちにしてくれるその声で。


懐かしい。あの日アオ先生がくれた言葉を、再びナツが、私にくれる。


溢れる涙は、もう留める方法を失って頬を濡らし続ける。
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