【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
ナツが全てをぶつけてくれたおかげか、私の焦りは不思議となくなった。
日々、時は過ぎていく。あっという間のようで、ゆったりしているようなそんな時間は。
だけど、それは悲しいことじゃない。むしろ一日一日が、一秒一分が大切に思えるようになった。
私が帰るまで、残り一週間。
「冬花、あの二人さ……デキてるよな?絶対。そう思わない?」
お店は暑さからか観光客がなかなか引かないものだから、相変わらずバタバタ。
なのに、ナツと来たら、ずーっと二人のことばっかり観察してるんだ。
「やだなぁ、ミーハーな近所のオジサンみたい、ナツったら」
「お、オジサン!?まだ俺二十代なのにー」
私の言葉に本気で落ち込むナツに、思わずふはっと息を漏らして笑ってしまう。
流石に、こんなにしょぼくれたナツに、カズからすればオジサンでしょ、何てことは言えないかな。