【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
居酒屋に入り、お酒と食べ物を頼み、一息つく。


「そういえば、二人きりで飲むのって初めてだね。今更ながら」


「だねえ。こっちに来た初日は、オジイ達にガンガン飲まされたもん。二人でゆっくりは、初めてだ」


初日の夜はただでさえお父さんと飲んでて二日酔いで沖縄まで来てたのに、夜にいっぱい飲まされたんだよね。


「……今日は大丈夫だよ。酔っ払われたら困るしね」


ナツの含んだ言葉に、私は眉間を寄せてじっと見つめる。


何も言ってないけれど、視線から私の意図を読み取ったらしく、ナツは苦笑いで答えた。


酔っ払われたら困るってどういう意味なんだろう。


「とりあえず、酔っ払われたら困るなら強いお酒を飲ませないでよね」


「はーい、了解でーす」


ニッと白い歯を見せたナツの笑顔の眩しさは、初めてここに来てからちっとも変わることは無い。多分、私がいなくなったこれからも。
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