【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「俺のフルネームはアオヤギナツキ、冬花はハルイフユカ、でしょ?で、名字の頭の漢字をくっつけると、“青春”になるんだ」


なんだか楽しそうに話すナツに、私も笑顔になる。


「夏と冬は交われないかもしれないけど、俺達は二人で“青春”だから。それはずっと変わらないよ」


ナツの言いたいことは分かる。急ぐ気持ちや不安はなくなった。だけど、思い出にしてしまうとなると、やっぱり悲しいな。


私は目頭が熱くなり、目の前で笑うナツの逞しい胸板にタックルするように抱き着いた。


そうやって誤魔化さないと、帰りたくないとごねてしまいそうなんだもん。


硬い胸板にグリグリ額を押し付けると、ナツのゴツゴツの掌が、優しく私を撫で付ける。
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