【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
何て思いながら縋るようにステージを見上げると、ナツはステージに、小さな三味線みたいなものを持って立つ。


「えー。なんだか皆様の温かい言葉により、俺もマイ胡弓を持ってこの場に立たせていただきました。ここのマスターのナツです」


馴染みらしきお客さんからは、指笛がそうじゃない人からは拍手が沸き起こる。


「じゃあ、早速一曲行こうかな。バックバンドもよろしくな」


明るい照明にキラリ、と反射するナツの顔のピアス達。まるでナツの言葉とお客さんの声に反応しているみたいだ。


その明るかった照明が優しいブルーに変わった瞬間、ナツの優しい歌声が会場を包んだ。


それは、ナツの笑顔みたいな優しい優しい、そんな歌声。
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