【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
ナツに連れられ、小型ジェット漁船に乗せられる。


「おじいに特別に借りたんだ。ガタガタだけど、まあ我慢してよ。あ、ちなみに免許は持ってるから心配しないで」


そんな言葉を言ってはいるものの、エンジンと格闘するナツに少し不安になる。


ボボボボ……となんだか危ない音をだす漁船に揺られ、どれくらい時間が経ったのだろう。


青過ぎる海に時間という感覚を奪い去っているって感じだ。


きっとそんなに経ってないんだろうけど、なんだかゆったりと一秒、一分が過ぎていく。


不思議、不思議だ。それが苦痛じゃないんだ。


ここに来てまだ一日も経っていないというのに、私はどれだけの不思議を味わうのだろう。


それすら、苦痛どころか喜ばしく思えてしまう。
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