【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
ゆったりとした、だけど充実した満足に溢れた日々はあっという間に五日経つ。


手伝いの仕事にもだいぶ慣れたと思った頃、ついに、問題が発生した。


「おい!ふざけるな!何分も待たせた揚句、オーダーと違うもの持って来るってどういうことだよ!」


「す……すみません」


少し強面の男の人と、老けた元ヤンみたいな女の人の、多分夫婦だと思う。


男の人は流暢な標準語。おそらく、観光客なのだろう。


今日は地元で人気らしいローカルの歌手が来てたから、四人じゃ回らないのは当たり前。


私は謝りながらも、そのお客さんに対して納得のいかない顔をしてしまう。


そんなの、ホントはこっちの都合なのだからこっちが悪いのに、忙しさと慣れてきたという小さな過信がもたらした、大きな問題だった。
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