【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「痛かったろ?ごめんな。早く気付いてやれなくて」


悲しそうなナツの声。こんなに優しい人を怒らせたんだ。私も罪悪感に苛まれる。


「ううん。私も態度が悪かったから。……それより、さ」


ナツの問い掛けに私が歯切れ悪く切り返すと、ナツの私の治療していた手が止まり、ゆるりと顔が上がる。


「何?どうした?俺治療下手?」


「いや……そうじゃなくて。さっき、なんて言ったのかなって思って」


その言葉の後、ナツと私は何秒か見つめ合う。


しかし、ナツは照れ臭そうに真顔になるとまた治療に戻ってしまった。


本人が言ってくれないのなら、アヤに聞くからいいけど。


こんな顔のナツも初めて。でも……嫌どころか、胸がきゅうんと締め付けられる。
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