【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「おーい、冬花、着いたよ。おーきーろー」


再び目を覚ました時、固い軽トラのせいで体中が犇めくような痛みに苛まれた。


「イタタタ……このクソ親父」


小汚い、古い軽トラから下りると灼熱のアスファルト。


潮の香りがぷーんと漂って来て、眼前には白い砂浜とスカイブルーの海。


「はあ……マジで来ちゃったの?」


「おう。どうだ?綺麗だろ?はっはっは」


……むかつく。綺麗過ぎてなんかむかつくわ。


いくら抵抗しても無駄。お父さんの思惑通り、私は沖縄に来てしまったらしい。もうどうしようもない。
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