【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「なにしてるの冬花、帰ろう?」


固まる私をポン、と後ろから軽く押すゴツゴツの男性らしい手と、聞こえる掠れた、低すぎない声。


私は途端に頭がくらくらとして、なんだか涙が出そうになった。


やだ……煩いよ心臓!治まって!


なんて思っても心拍数は下がるどころかヒートアップするばかり。


こんな私の恋心みたいな変な感情、朝のナツの料理みたいに言葉通り「しりしり」したい。


でも、削っても削っても、膨らむ一方だよ。


ねぇ、こんな時はどうすればいいの?


「なんだ?ん?ケガのせいで熱でも上がったの?」


「そうじゃない!……いや、そう、かも」


そう思いたい。これは、ケガのせい。そうしたいのに、原因はやっぱりケガじゃなくて、ナツなんだ。
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