【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「どうする?雨宿りしてく?」


「いや、早く帰りたいから走る」


ナツの問い掛けに答えると、ナツは返事の代わりにニッコリ笑う。


「じゃあ全力ダッシュだ!オリャー!」


なんて言いながらも、私の走る速さに合わせて歩幅を合わせるナツの優しさが、私をキュンとさせる。


これが意識的ならナツは完全に確信犯だ。


隣のナツに少しだけ近づいて肩でタックルをかますと、ナツは横目で私を見て同じことを仕返した。


体格差があるのに、ナツのタックルは優しくて、全然痛くなくて、私のドキドキを加速させるだけ。


触れるところの全部がナツの体温に温められて、雨なのに熱くて、じりじりする。


その痛みも全部、心地よい。
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