【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「じゃあ父さん帰るからな。また八月末に迎えにくるよ。存分に楽しんでこーい!」


「えっ!ちょ……嘘、でしょ」


お父さんは、まるで役目を果たして満足かのように笑うと、紙切れを一枚と私の携帯電話を押し付け、早速と軽トラで去って行く。


「どうしろって言うのさ。知らん土地でさ」


私はカシスベリーの茶髪を掻きむしり、お父さんに渡された紙切れを見る。


"海沿いにクラブハウス『Spiel』ってところがあるから、そこのマスター夏紀さんにお世話になってね"


「なってね……って、いい歳こいたオッサンが。ハートマークまで付けおってからに」


しかたない。無一文の私が自力で帰るのは無理だし、ここに行くしかないな。
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