【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「冬花離しなさい!もー!」


「やーだー!ナツの照れてる顔見るんだもん」


ナツは私に抵抗するように両手で顔を覆い隠し、私はそのナツの両手首を掴み引っ張る。


「んー!ナツの強情めー!」


いつの間にか、半ばナツの手首にぶら下がる形になっている私。


ナツは遂に疲れたのか、ふっと急速に手の力を抜く。


しかし、今度は私が照れてしまいそうになった。


だって、ナツの大きな垂れ目が、鋭利で小さな鼻が、ぷっくりした唇が、顔中にちりばめられたピアスが近距離にあるんだもん。


ドッドッド、と強く波打つ心臓の音が、どうかナツに届きませんように。


動揺した私は、そんなことしか考えられない。
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