【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
吸い寄せられるようにナツのキラキラした瞳に視線が行く。


ナツのそのビー玉みたいな目が、私を捕らえて離さない。離してくれない。


どれくらいか至近距離で見つめ合ったが、どちらかともなく視線を逸らしていた。


「……ね、冬花。ひとつ、提案していい?」


沈黙の中に降り注ぐ、ナツの掠れた声。


「ひと夏限定で、俺の彼女にならない?」


そのナツの声が、熱に侵されたように、私を熱に侵すように、そう呟いた。


驚いてナツを見ると、その顔は真剣で、私は再びナツにくぎづけになった。


冗談を言っているわけじゃない。ナツは、見た目こそこんなんだけど、ちゃらけた大人じゃないのをもう私は知っている。
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