【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
知らない番号だし、一応出てはみたけど沈黙してみる。だって、怖いじゃん。


すると向こうから、聞き覚えのない声が響いた。


《あー…春井さんの娘さん、冬花さんですか?》


「そうですけど……あのー、もしかして父の知り合いのお店の?」


ちょっぴり鼻声の掠れた、色っぽさを感じる声。そんな印象の通話相手は、どうやら私が世話になるとこの人間らしい。


《そろそろ来るかなって思ってたんだけど、うちの場所分かる?》


「いえ、全く。ここが沖縄のどこだかも検討がつきませんし」


私はもじもじしてもしょうがないと思い正直に言う。


すると、相手の嫌な感じは全くしない小さな笑い声が携帯越しに響いた。
< 8 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop