【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「ちょっとびっくりさせちゃった?」


「……うん、まあ。ちょっとどころか、かなり」


ナツは私の返答に困ったように笑うと、私の頭をぽんぽんと撫でた。


「こっからは俺の憶測なんだけどさ、こいつらは小さいなりに一生懸命生きたわけよ。その想いってこんなになっても、きっと残ってると思うんだ。それって凄くない?」


ナツの低過ぎない掠れた声は、まるで波の音みたい。とても心地良くて、ちょっぴり切ない。


「だからさ、その想いが、きっと星砂になって冬花を幸せに導いてくれる。この小瓶は、冬花を守ってくれるよ」


夕日に照らされ、目を細めるナツの睫毛が頬にほんの少し影を落とす。


その顔が、嫌に綺麗で無性に泣きそうになった。
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