【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
少し零れて減った星砂を再び拾い集め、小さな貝殻を二、三個入れて、コルクで蓋を閉める。


「ちょっとそれ、貸してみ?」


星砂を集めた小瓶をナツに手渡すと、ナツはポケットから何か取り出し、小瓶に器用に取り付ける。


ナツの器用な指先で、ただの小瓶はみるみるとペンダントになっていった。


「じゃーん。こうしてあげたくて事前に用意してたのだ。へへーん」


「何その“してたのだ”って。なんかウケる。ぶりっ子じゃん」


こんな些細な会話でも幸せ。この幸せは、早くも星砂が引き寄せてくれたものなのかな。


小さいながら一生懸命に生きた、その命がもたらしてくれた奇跡だったら、それはとてもロマンに溢れている。
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