【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「さて、こちらのお姫様も少々飲み過ぎのようで。帰ろうか?」


アヤほどじゃないけど、かなり飲んで体の熱い私に気付いたナツは、手を差し延べる。


「あ、待って。お会計が……」


思考まではまだ酔いが回ってない私は財布と伝票を握りレジまで向かおうとする。


けれど、ナツに伝票をひょいっと奪われる。それはもう、ごく自然な動作で。


ナツは黙って笑顔だけ作り、私とアヤの会計を済ませてしまった。


「このひと夏を忘れられないように、少しでもポイント上げなきゃだからね」


ナツは再び私のところに戻ると、それだけ言って私の体を支えた。


このひと夏を忘れようと思っても忘れられるわけがないのは分かってることなのに、なんて、狡い人。
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