【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
花火のセットとろうそくの入ったコンビニの袋をぶら下げたナツはなんだか上機嫌。


そのまま寮に戻り、バケツと水とライターを準備すると、隣の空き地に移動する。


「やっぱり線香花火は最後だよね。じゃあ、まずはこれかー?」


ナツは長い花火を取り出すと火を点ける。棒の先っぽからは緑色の花火。


「冬花も、ほら!一緒に!」


「はいはい。やりますよー」


ナツがあまりにも無邪気に言うから、私もなんだか嬉しくて、袋から花火を取り出して火を点けた。


花火は数秒間美しく輝くと、フワァっと切なく散る。


派手な音を立て、火の粉を立て、光を放つのに、終わりはなんてあっけなく、寂しいんだろう。


これまで花火をした時には、感じなかった思いが膨れる。

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