Dear.

「ありがとうございました!」

あれから何曲か聴いて、気が付くと最後まで聴いてしまっていた。
空はすっかり暗くなり、街灯に照らされた木々。
歌が終わると集まっていた人達は一斉に散らばっていった。

開かれた道の先で絡み合った視線。
一瞬で我に返り、柚葉の腕を引っ張った。
が、すでに時遅し。


「聴いてくれてたの?」


少し驚いたような表情で近寄ってくる彼。
その言葉は他の誰でもない、私に向けられていた。隣で柚葉が不思議そうに訊いてきた。


「知り合い?」
「か、顔見知り……?」
「何で疑問系なの?」
「……一応告ったんだけどね」


私達の会話を聞きながら彼は苦笑いを浮かべた。
告ったって、あんなの本気じゃないくせに。
ちらっと見ると、彼は笑っていた。


「返事、待ってるから」


ドキンと高鳴る胸。
絶対遊ばれてるだけ。
そんな強い決意さえ揺るがしてしまう。
本当は少し気になってるなんて、思いたくなかったのに。貴方に出会って三日、ずっと悩んでた。


断るという選択肢以外の答えを――。

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