Dear.
「……それも冗談ですか?」
正直、何を言われたのか分からなかった。
初対面なのに、付き合うって考えられない。この人絶対私のことからかってる。
そう思っていた私とは反対に、彼はにっこり笑って言った。
「いや? 今度は本気」
まっすぐ見つめられて、少しドキッとした。
こんないかにも遊んでそうな人、
関わったら絶対傷つくだけ。
どうせ飽きたら捨てるんでしょ?
「あ、いたいた! 櫂、映画始まんぞ」
「おー、わりい。すぐ行く!」
遠くから呼ぶ声に反応する目の前の彼。どうやら、櫂というのはこの人の名前らしい。
彼は映画のパンフレットの端をちぎると、近くにあったボールペンを手に取って何やら書き始めた。
今思えば、この時にこっそり逃げる事だって出来たのに……。
私はただ貴方の姿を見つめていた。