想い、果てるまで
「--ん?」
自分を呼ぶ声の方を振り返ると、そこには中条の姿があった。
「いやー…ごめんねー。嫌なところ見せちゃって」
私は気丈に振る舞ったつもりだったんだけど、中条はそんな私の作り笑いを見て悲しそうな表情を見せた。
そして、ゆっくりと近づいてきて、私を優しく抱き締める。
「………無理しないでよ……」
「…うん。ありがと。でも、ほんとにあなたを利用していいの?」
「ああ…。」
まだ紫波の事が好きな私が言うのもなんはだけど、中条の胸の中は私に安心をくれる。
凄い私を思ってくれてる事が伝わってくる。
だから、それだけに中条を好きになれない自分に嫌気がさす。
「ごめんね中条…。私、絶対に紫波を忘れてみせるから」
「……あぁ。忘れさせてやるから…。」
あなたを利用してまで。
だから、私はこの時気付かなかったんだ。
中条が私を抱き締めながら、どんなに辛い表情をしているかなんて。