想い、果てるまで


私の言葉に、中条はおずおずと手を放した。



「…ちょっと!あんたも手放しなさいよ」

「やだ」

「やだってあんた…駄々をこねるな!」


紫波は私の手を握ったままそっぽを向く。
そのやり取りが気に入らなかったのか、中条は再び私の手を取った。



…振り出しに戻った。





「お前はもう振られたんだろ?なら諦めろ」

「…それは認めても、お前に負けるのだけは嫌だ」


「…もう、気付いてんだろ?これが俺とお前の差。所詮お前じゃ俺に勝てないんだよ。………何にしてもね」

「――ッ!!」



次の瞬間、中条は紫波を殴り飛ばしていた。


「うるさい!!」


…こんなに冷静さを欠いた中条を見るのは初めてだ。

ついでに私の両方の手が自由になった。


だがしかし、この場合はどちらに駆け寄ればいいのか。


手を出すのはいけないと思うけど、紫波も手を出されても仕方がないというか、


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