【僕らの撃退大作戦】
「あ、ユリカさんちょっと待っ──
って、もう切れてら」
耳からケータイを離し、ちょっと躊躇ったのち、今度はタカヤ側から支店へと電話をかける。
支店にかけられた電話は、よほどの繁忙時でない限りは女性が出る。
この時間には役付しか男性がいないからなのだが、目標という名のノルマ仕上がりを確認されたくないタカヤにとっては好都合。
しかし女性たちはこの時間忙しいのも事実なので、さっきのユリカの勢いでは次長が出る可能性も無いではない。
一か八かの賭の気持ちで、通話ボタンを押した。
ワンコールの途中で『お電話有難うございます』から始まる一連の言葉が連なっていくのを、タカヤは申し訳なく遮る。
ユリカではなく、彼女の隣で窓口を受け持つおとなしい女性だったことに胸を撫で下ろす。
「忙しいとこすみません、タカヤですけど。
後ろ開けて貰えませんか?」